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大阪地方裁判所 昭和60年(う)3499号 判決 1986年12月17日

本店所在地

大阪府寝屋川市東大利町二番一九号

泰斗興産株式会社

(右代表者代表取締役金泰源)

国籍

韓国慶尚北道清道郡角南面新堂洞二六三

住居

大阪府寝屋川市東大利町二番一九号

会社役員

金城泰二こと金守

一九四〇年七月一〇日生

国籍

韓国慶尚北道清道郡角南面新堂洞二六三

住居

大阪府東大阪市稲田一四四一番地の八

会社役員

金城泰奉こと金奉

一九四六年八月五日生

右泰斗興産株式会社に対する法人税法違反、右金泰守、同泰奉に対する法人税法違反、所得税法違反各被告事件について、当裁判所は、検察官城祐一郎出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人泰斗興産株式会社を罰金七〇〇〇万円に、被告人金守を懲役一年六月及び罰金七〇〇〇万円に、被告人金泰奉を懲役一年六月及び罰金一億五〇〇〇万円に処する。

被告人金守及び被告人金泰奉において、その罰金を完納することができないときは、金四〇万円を一日に換算した期間その被告人を労役場に留置する。

(罪となるべき事実)

被告人泰斗興産株式会社(以下、「被告会社」という。)は大阪府寝屋川市東大利町二番一九号に本店を置き、遊技場の経営等を目的とする(現実の主たる営業はパチンコ店の経営)資本金一二五万円の株式会社であり、被告人金守は、被告会社の代表取締役(昭和六一年一月二七日辞任)としてその業務全般を統括するとともに、同市早子町一七番一九号等においてパチンコ店を経営していたもの、被告人金泰奉は、被告会社の専務取締役(昭和六〇年五月三〇日退任)として被告人金守を補佐して被告会社の業務全般を統括し、大阪府東大阪市稲田一四四一番地の八においてパチンコ店を経営するとともに、被告人金守の経営するパチンコ店の経営管理に従事していたものであるが

第一 被告人金守及び被告人金泰奉は、共謀のうえ、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て

一 被告会社の昭和五六年四月一日から同五七年三月三一日までの事業年度において、その所得金額が三億〇九六六万四一三二円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、パチンコ店の売上の一部を除外するなどの行為により右所得の一部を秘匿したうえ、同五七年五月三一日、大阪府枚方市大垣内町二丁目九番九号所在の所轄枚方税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五五二〇万〇〇二二円で、これに対する法人税額が二一七〇万七四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納税期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億二八五八万二三〇〇円と右申告税額との差額一億〇六八七万四九〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れ

二 被告会社の同五七年四月一日から同五八年三月三一日までの事業年度における所得金額が三億七八六七万四〇九五円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿したうえ、同五八年五月二八日前記枚方税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五八六四万八一五五円で、これに対する法人税額が二二六七万三六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億五七〇八万四五〇〇円と右申告税額との差額一億三四四一万〇九〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れ

三 被告会社の同五八年四月一日から同五九年三月三一日までの事業年度における所得金額が二億五八五四万三一八五円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿したうえ、同五九年五月二九日前記枚方税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七一〇〇万八三九二円で、これに対する法人税額が二八二三万一一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過をさせ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億〇六九九万五八〇〇円と右申告税額との差額七八七六万四七〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れ

第二 被告人金守は、所得税を免れようと企て、前記金泰奉と共謀のうえ

一 被告人金守の昭和五六年分の所得金額が二億一二八一万九六六四円(別紙(五)総所得金額計算書及び修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、パチンコ店の売上の一部を除外するなどの行為により所得の一部を秘匿したうえ、同五七年三月一五日、前記枚方税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二六七九万二八三七円で、これに対する所得税額が九二八万四五〇〇円である旨の虚偽を所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により同被告人の同年分の正規の所得税額一億四三〇四万二七〇〇円と右申告税額との差額一億三三七五万八二〇〇円(別紙(八)税額計算書参照)免れ

二 被告人金守の昭和五七年分の所得金額が二億八九五八万一八四〇円(別紙(六)総所得金額計算書及び修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、前同様の不正行為により所得の一部を秘匿したうえ、同五八年三月一五日、前記枚方税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七八七五万二三〇八円で、これに対する所得税額が四二六五万二七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により同被告人の同年分の正規の所得税額二億〇〇五五万二五〇〇円と右申告税額との差額一億五七八九万九八〇〇円(別紙(八)税額計算書参照)を免れ

三 被告人金守の昭和五八年分の所得金額が一億四五一五万一五三九円(別紙(七)総所得金額計算書及び修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、前同様の不正行為により所得の一部を秘匿したうえ、同五九年三月一五日、前記枚方税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八八一五万八七三七円で、これに対する所得税額が四九四一万四七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により同被告人の同年分の正規の所得税額九二一五万九五〇〇円と右申告税額との差額四二七四万四八〇〇円(別紙(八)税額計算書参照)を免れ

第三 被告人金泰奉は、所得税を免れようと企て

一 同被告人の昭和五六年分の所得金額が一億四八〇四万一三八六円(別紙(九)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、パチンコ店の売上の一部を除外するなどの行為により所得の一部を秘匿したうえ、同五七年三月一五日、大阪府東大阪市永和二丁目三番八号所在の所轄東大阪税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二〇〇五万六八五二円で、これに対する所得税額が六五一万二五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により同被告人の同年分の正規の所得税額九五六二万八〇〇〇円と右申告税額との差額八九一一万五五〇〇円(別紙(一二)税額計算書参照)を免れ

二 同被告人の昭和五七年分の所得金額が六億〇九七三万二四九〇円(別紙(一〇)総所得金額計算書及び修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、前同様の不正行為により所得の一部を秘匿したうえ、同五八年三月一五日、前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三九八一万七五八四円で、これに対する所得税額が一七六八万九六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により同被告人の同年分の正規の所得税額四億四一八五万八二〇〇円と右申告税額との差額四億二四一六万八六〇〇円(別紙(一二)税額計算書参照)を免れ

三 同被告人の昭和五八年分の所得金額が三億七七六六万八八一二円(別紙(一一)総所得金額計算書及び修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、前同様の不正行為により所得の一部を秘匿したうえ、同五九年三月一五日、前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六二七四万一四四七円で、これに対する所得税額が三二四八万八七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により同被告人の同年分の正規の所得税額二億六七七三万三七〇〇円と右申告税額との差額二億三五二四万五〇〇〇円(別紙(一二)税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

[注]1 証拠書類の特定のために証拠等関係カード検察官請求番号を(番号1、2)等と略記する。

2 同一証拠が「被告会社」と「被告人金守及び同金泰奉」関係で別々に請求されたため、同一証拠に請求番号が二つあるものがあるが、その場合は、(番号1<90>)などと略記する。なお、右のうち、< >内の数字は被告会社分である。

判示事実全部について

一 被告会社の代表者金泰源の当公判廷における供述

一 被告会社代理人兼被告人金守の当公判廷における供述

一 被告人金泰奉の当公判廷における供述

一 第二回公判調書中の被告人金泰奉の供述部分(ただし、被告会社関係では除く。)

一 被告人金守の検察官に対する供述調書三通(番号77<121>ないし79<123>)

一 被告人金守に対する収税官吏の質問てん末書六通(番号69<114>、ないし71<116>、74<118>ないし76<120>)

一 被告人金泰奉の検察官に対する供述調書(番号86<128>)

一 被告人金泰奉に対する収税官吏の質問てん末書四通(番号81<124>~83<126>、85<127>)

一 正木春代の検察官に対する供述調書(番号66<112>)

一 収税官吏作成の査察官調査書五通(番号12<101>、13<102>、18<107>、36<110>、37<111>)

判示冒頭の事実について

一 商業登記簿謄本(番号144)

一 閉鎖商業登記簿謄本二通(番号139、140)

判示第一及び第二の各事実について

一 第二回公判調書中の被告人金守の供述部分(ただし、被告会社関係では除く。)

一 被告人金守に対する収税官吏作成の質問てん末書(番号73<117>)

一 収税官吏作成の査察官調査書(番号17<106>)

判示第二及び第三の各事実について

一 被告人金泰奉に対する収税官吏作成質問てん書(番号84)

一 中川耐の検察官に対する供述調書(番号68)

一 収税官吏作成の査察官調査書三通(番号28、31、33)

判示第一の各事実について

一 一井武の検察官に対する供述調書(番号67<113>)

一 枚方税務署長作成の青色申告書提出の承認申請取消証明書(番号88<129>)

一 収税官吏作成の査察官調査書七通(番号10<99>、11<100>、14<103>ないし16<105>、19<108>、20<109>)

一 金守作成の泰斗興産株式会社の定款(番号9<98>)

一 商業登記簿謄本(番号8<97>)

判示第一の一の事実について

一 枚方税務署長作成の証明書(法人税確定申告書添付のもの)(番号4<93>)

一 収税官吏作成の脱税額計算書(番号1<90>)

判示第一の二の事実について

一 枚方税務署長作成の証明書(法人税確定申告書写添付のもの)(番号5<94>)

一 収税官吏作成の脱税額計算書(番号2<91>)

判示第一の三の事実について

一 枚方税務署長作成の証明書(法人税確定申告書写添付のもの)(番号6<95>)

一 収税官吏作成の脱税額計算書(番号3<92>)

判示第二の各事実について

一 枚方税務署長作成の青色申告提出の承認申請取消証明書(番号27)

一 被告人金泰守に対する収税官吏の質問てん末書(番号72)

一 林龍元に対する収税官吏の質問てん末書二通(番号63、64)

一 神太麻勲に対する収税官吏の質問てん末書(番号65)

一 収税官吏作成の査察官調査書一二通(番号29、30、32、34、35、38、39ないし43、57)

判示第二の一の事実について

一 枚方税務署署長作成の証明書(所得税額確定申告書写添付のもの)(番号24)

一 収税官吏作成の脱税額計算書(番号21)

判示第二の二の事実について

一 枚方税務署作成の証明書(所得税確定申告書添付のもの)(番号25)

一 収税官吏作成の脱税額計算書(番号22)

判示第二の三の事実について

一 枚方税務署長作成の証明書(所得税確定申告書写添付のもの)(番号26)

一 収税官吏作成の脱税額計算書(番号23)

判示第三の各事実について

一 東大阪税務署長作成の青色申告書提出の承認申請取消証明書(番号89)

一 収税官吏作成の査察官調書一二通(番号50ないし56、58ないし62)

判示第三の一の事実について

一 東大阪税務署長作成の証明書(所得税確定申告書写添付のもの)(番号47)

一 収税官吏作成の脱税額計算書(番号44)

判示第三の二の事実について

一 東大阪税務署長作成の証明書(所得税確定申告書写添付のもの)(番号48)

一 収税官吏の作成の脱税額計算書(番号45)

判示第三の三の事実について

一 東大阪税務署長作成の証明書(所得税確定申告書写添付のもの)(番号49)

一 収税官吏作成の税額計算書(番号46)

なお、弁護人らは、判示第一の各事実に関し、被告人金泰奉は、社長である兄の被告人金守の指示に従って、被告会社の売上を一部除外し、仮名預金に預け入れるという行為に加担していただけで、被告人金守が脱税を決定するについて関与しなかったこと等から、不正行為についてのいわゆる制限説の立場に立てば被告人金泰奉に共犯責任を認める余地があるのか否か極めて疑わしく、いわゆる包括説の立場にたってみても同被告人にはせいぜいほ幇助犯の成立が考えられるだけである旨主張する。

しかしながら、被告人金泰奉(番号86<128>)、同金守(番号78<122>)及び一井武(番号67<113>)の検察官にたいする各供述調書等によれば、被告人金泰奉は、弁護人らが右に指摘する被告会社の売上の一部除外行為をなしたほか、判示第一の各事実の被告会社の三事業年度にわたる法人税の確定申告手続は税理士一井武を通じてなされていたところ、その申告に際し、その都度被告人金泰奉において被告人金守とともに右税理士の事務所を訪れたうえ、法人税の確定申告額の打ち合わせをしたことが認められるのであるから、被告人金泰奉も被告人金守とともに被告会社の法人税の過少申告行為自体に関与したことになり、右いずれの説によっても被告人金泰奉は判示第一の各罪につき共同正犯者としての責を追わねばならないものである。

ところで、被告人金泰奉及び被告人金守の前記各検察官に対する供述調書によれば、被告人金守において、被告人金泰奉とともに前記税理士事務所を訪れ被告会社の法人税の申告額の打ち合わせをした後に、単独で前記一井税理士に被告会社の架空の経費の存在を説明し、その結果、右打合せの際より脱税額が若干増加した事実が窺えるのであるが、被告人金泰奉の検察官に対する供述調書(番号86<128>)中の、「兄(被告人金守)は世間並の申告をすると言っていたので、税理士から言われる当初の所得の大枠がその相場に合わない時は、適宜兄が判断して架空の経費の計上などで微調整することもあるということは私もよく承知していたので兄に任せていたのです」旨の記載に徴せば、被告人金泰奉はその脱税額の増加部分も含め被告人金守との共同正犯者としての責を免れない。

次に、弁護人らは、被告人金泰奉の判示第三の一の及び二の各事実に関し、各雑所得の申告脱漏がほ脱額を極めて巨額なものにしているが、被告人金泰奉がその各所得税を申告する時点で、この雑所得の金額は特定されいないところ、被告人金泰奉において、これにつき確定した所得としての認識はなく、納税義務の認識を欠いていたので、右部分については犯意を欠くものとして脱税額から除かれるべきである旨主張する。

しかしながら、被告人木泰奉及び被告会社代理人被告人金守の当公判廷における各供述並びに被告人金泰奉(番号86<128>)及び同金守(番号77<121>)の検察官に対する各供述調書等によれば、被告人金守が個人で経営していた大阪府寝屋川市所在の<三>パチンコセンター及び大阪市鶴見区所在の丸三会館の二店舗について、その日常の経営管理を被告人金泰奉が主として行っていたことから、被告人金守において、その労に報いるため、昭和五七年以降右二店舗から除外した売上所得の二分の一を経営管理料として、被告人金泰奉に対し支払う旨同年初めに約したことが認められる。

ところで、所得税法は、現実の収入がなくても、その収入の原因たる権利が確定的に発生した場合には、その時点で所得の実現があったものとして、右権利の発生の時期の属する年度の課税所得を計算するといういわゆる権利確定主義を採用していると解されるところ、右経営管理料は法律上これを行使することができるようになったときに右権利の確定した金額と認めるのが相当である。そうすると、前掲被告人両名の検察官に対する各供述調書および収税官吏作成の査察官調査書等によれば、被告人金泰奉に雑所得として、昭和五七年に二億四〇六〇万五〇〇〇円、昭和五八年に一億四三二七万五〇〇〇円の所得があること及び同被告人においてその所得を十分に認識していたことが認められるから、同被告人にその所得に関する脱税の犯意を優に認めることができる。

以上のとおりであるから、弁護人らの主張はいずれも理由がない。

(法令の適用)

被告人金守及び被告人金泰奉の判示第一の各所為はいずれも刑法六〇条、法人税法一五九条一項に、被告人金守の判示第二の各所為はいずれも刑法六〇条、所得税法二三八条一項に、被告人金泰奉の判示第三の各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するので、被告人金守及び被告人金泰奉につき判示第一の各罪についてはいずれもその所定刑中懲役刑を選択し、被告人金守の判示第二の各罪及び被告人金泰奉の判示第三の各罪についてはいずれもその所定の懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ、情状により所得税法二三八条二項を適用し、被告人金守につき判示第一及び第二の各罪、被告人金泰奉につき判示第一及び第三の各罪はいずれも刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により、被告人金守について犯情の最も重い判示第二の二の罪の刑に、被告人金泰奉については犯情の最も重い判示第三の二の罪の刑にそれぞれ法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により右被告人両名とも罰金額を合算し、その各刑期及び、金額の範囲内で、被告人金守を懲役一年六月及び罰金七〇〇〇万円に、被告人金泰奉を懲役一年六月及び罰金一億五〇〇〇万円に処し、同法一八条により、右被告人両名において、右各罰金を完納することができないときは金四〇万円を一日に換算した期間その被告人を労役場に留置することとする。

更に、被告人金守及び被告人金泰奉の判示第一の各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社は法人税法一六四条一項により判示第一の各所為につき法人税法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、右各罪につきいずれも情状により法人税法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で、被告会社を罰金七〇〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、判示のように、被告人金守及び同金泰奉が共謀のうえ、パチンコ店の経営を主たる目的とする被告会社の業務に関し、その三事業年度にわたり、合計約三億二〇〇〇万円の法人税を免れた事案のほか被告人金守について三年分合計約三億三四〇〇万円、同金泰奉について三年分合計約七億四八〇〇万円の各所得税を免れた事案である。

ほ脱額は右のとおり巨額であって、そのほ脱率も被告会社につき約八二パーセント、被告人金守につき約七七パーセント、同金泰奉につき約九三パーセントといずれも高率であるうえ、その各犯行動機についてみても、被告人には不況時に備え、好景気の際に事業資金を貯えようとしたこと及び同業者間における納税申告率の平均化を計ろうとしたことをあげているが、前者は要するに自己の利欲のみを追及したことに帰するのであり、後者は結局同業者全体で脱税を計っていたとも評価し得るものであって、いずれも酌むべき事情とはなり得ず、被告人金守及び同金泰奉につき、その犯情は悪質といわざるを得ない。

なるほど、本件各ほ脱の手口は格別巧妙な手段を用いているとまではいえないこと、本件すべての違反に伴う修正本税、重加算税等が既に納付済みであること及び右被告人両名の反省の情など弁護人らの指摘する右被告人両名にとって有利な諸事情は認められるが、これらを十分考慮にいれても、前記ほ脱額、ほ脱率及び本件のような巨額のほ脱行為が国民の納税倫理感を著しく損なわせるものであること等社会に及ぼす悪影響に徴すると、右被告人両名に対しその懲役刑の執行を猶予するのは相当ではない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 七沢章 裁判官 松本信弘 裁判官 上原茂行)

別紙(一) 修正損益計算書

<省略>

別紙(二) 修正損益計算書

<省略>

別紙(三) 修正損益計算書

<省略>

別紙(四) 税額計算書

<省略>

別紙(五) 総所得金額計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙(六) 総所得金額計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙(七) 総所得金額計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙(八) 税額計算書

<省略>

別紙(九) 修正損益計算書

<省略>

別紙(一〇) 総所得金額計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙(一一) 総所得金額計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙(一二) 税額計算書

<省略>

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